植木の移植に悪い時期

春になり、樹木の新芽がどんどん伸びてきていますね。特に落葉樹はやわらかな緑の新芽が本当に鮮やかです。

しかし一方で、4~5月の新芽の時期は植木屋にとって頭の痛い時期でもあります。新芽がまだ柔らかい時期は植木を移植するといたみやすいのですが、とはいえ注文があって植木をうごかさなければいけないこともある、という場面が出てくるからです。

今回は、春先に植木を動かすと何が起こるのか、どうして移植に悪いのかをご紹介します。

アオダモの新芽

A. 新芽が伸びている時期の植木の掘り取り作業

 在庫のウバメガシ(高さ5.5m)を、新芽が伸びている最中の4月初旬に掘りあげました。

(※本来は移植するのに適さない時期ですが、この樹の場合、年数をかけて大きく育っているために体力があること、また以前に何度か根回しをして細根が充実していることから移植に耐えられると判断して出荷しました。) 

 掘りあげる際、根鉢の外側に伸びた根っこを切断するのですが、そうすると樹は根からの水や養分の供給が急激に減ることになります。下の写真のように新芽が伸び出したばかりでまだ柔らかい状態ですと、水分などが不足して新芽が垂れ下がってしまいます。

 この樹の場合は体力があり、垂れた新芽も次の日にはピンと張った状態に戻っていましたが、ひどい場合には新芽が枯れてしまうこともあります。特に春先に1番最初に出る新芽がいたむと樹全体が弱ってしまいますので、基本的には春先に植木を動かすのは避けるのが安全です。

(1)通常の新芽

新芽が「ピン」と伸びています。

(2)掘り取り時に根を切ったあとの新芽

水の供給が減り、新芽が垂れ下がってしまいました。

(3)根巻きをしたウバメガシの全体

根巻き(根を切断)をした状態。

(4)根巻きをしたウバメガシの頂部

(3)の写真の頂部のアップ。伸びている最中の新芽が全体的に垂れ下がっているのが分かります。


B. その他の樹木の新芽

イロハモミジ(202年4月初旬)【全体】

イロハモミジ(202年4月初旬)【新芽】


 写真のように新芽が伸びて固まる前の春先の時期は、落葉樹でも常緑樹でも移植を嫌います。(移植をすると枯れてしまうリスクが高くなるのです。)4月~5月頃に植木屋さんに樹の注文をすると、「この時期は枯れるからやめておいた方がいいよ」と言うことがありますが、それにはこのような理由があります。